約 3,152,007 件
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/126.html
2920 南中の月(7巻) 第一紀 最後の年 カルロヴァック・タウンウェイ 著 2920年 南中の月4日 帝都 (シロディール) 皇帝レマン三世と支配者ヴェルシデュ・シャイエは、2人並んで宮殿の庭園をぶらついていた。彫像や噴水で飾られた、北の方の庭園が皇帝の今の気分に合っていた。何より夏の暑さを避けるのに好都合であった。よく手入れされた、青灰色と緑色に染まった花壇が、歩いて行く彼らの周りに階段状に広がっていた。 「ヴィヴェックは王子の和平の申し出を受け入れたようだな」と皇帝は言った。「息子は2週間もすれば帰ってくるそうだ」 「素晴らしい知らせですね」ヴェルシデュ・シャイエは注意深く答えた。「ダンマーが約束を守ってくれればいいのですが。ブラックゲート要塞の件もありますし、それに関しては、私達も強く出るべきでしょう。しかし、王子は妥当な方法を採られたと思います。決して、平和のためだけに帝都を陥れるようなことはなさらないでしょう」 「このところ私が考えていることは、なぜリッジャが私を裏切ったかということだ」と言って皇帝は立ち止まると、奴隷女王アレッシアの像を崇め、言葉を続けた。「一つだけ考えられる理由は、彼女が王子の方になびいていたのかもしれない、ということだ。確かに私の権力や人柄には惚れ込んでいたのだろうが、しかし王子は若い、そして美しい。それに、ゆくゆくは皇位を継ぐことになる。もし私を暗殺してしまえば、彼女は若さと権力の両方をそなえた皇帝を手に入れられるのだから」 「王子が? 彼がこの謀略に関係していると?」ヴェルシデュ・シャイエは尋ねた。皇帝の被害妄想の矛先はどこに向かうのか予想できなかった。 「いや、もちろん本気でそうだとは思っていない」と皇帝は笑って言った。「王子は私のことをとても愛してくれている」 「コルダのことはご存知ですか? リッジャ様の妹で、ヒゲースにあるモルワ修道院の生徒なのですが」とシャイエは聞いた。 「モルワ? そこは何の神だったかな?」と皇帝が聞いた。 「官能と豊穣を司る、ヨクーダの女神ですよ」とヴェルシデュ・シャイエは答えた。「もっとも、ディベラほどの好色でありませんが。つまり、上品な官能なんです」 「私は官能的な女性にはうんざりだ。リッジャ女帝は欲望が過ぎる。強すぎる愛への切望は、強い権力への切望に通じているものだ」と皇帝は肩をすくめた。「しかし、ある程度の健康的な欲求を持った司祭見習いなら、理想的というもの。ところで、ブラックゲート要塞の件についてはどう思う?」 2920年 南中の月6日 サーゾ要塞 (シロディール) 皇帝がリッジャに話しかけたとき、彼女は冷たい石床にじっと目を落としていた。これほどまでに青白くやつれた姿を、彼は見たことがなかった。少なくとも、自由の身になって故郷に戻れることを彼女は喜んでいるのかも知れない。何故なら、彼女が帰る頃には、ハンマーフェルでは「商人の祝典」が開かれているからだ。だが、彼の見たところ、彼女は何の反応も示さなかった。このサーゾ要塞での1ヶ月半が、彼女の心をすっかり壊してしまったのだ。 「私はこう考えている」ととうとう皇帝は切り出した。「お前の妹のコルダを、しばらく宮殿に置こうと思う。きっと、ヒゲースの修道院よりは気に入ってくれると思うんだが。そう思わないかい?」 彼女は反応した。キッと彼の方を見据えると、獣のような怒気を投げつけたのだ。そして、長年の監禁で伸び放題になっていた爪を、彼の顔面、目に向かって振り下ろした。彼が痛みに声をあげると、衛兵がすぐに駆けつけ、彼女を剣の峰でもって気絶するまで激しく殴った。 すぐに治癒師が呼ばれたが、皇帝レマン三世は右眼を失った。 2920年 南中の月23日 バルモラ (モロウウィンド) 水から出ると、ヴィヴェックは肌に照りつける太陽の熱を感じた。そして、召使いからタオルを受け取った。ソーサ・シルがこの古い友人の様子をバルコニーから見ていた。 「傷跡がまた増えたようだね」とその妖術師は言った。 「アズラの話では、しばらくはこれ以上増えることはないはずだがね」とヴィヴェックは笑った。「いつこっちへ?」 「1時間くらい前だ」とソーサ・シルは言って、階段を降り、彼のそばに近寄った。「戦争は終わりに近付いているようだな。しかも、私の手を借りず、君の手によって」 「まあ、いくら終わらないとはいえ、80年は長すぎる」ヴィヴェックはそう返すと、ソーサ・シルと抱き合った。「こちらも譲歩したし、あちらも譲歩した。今の皇帝が死ねば、私達は黄金期に入るだろうね。ジュイレック王子は、年の割に聡明な青年だ。ところで、アルマレクシアはどこだ?」 「モーンホールドへ公爵を呼びに行っている。明日の昼には、2人ともここへ到着するだろう」 彼らは、ふと邸宅の角の方を見やった。2人に向かって、馬に乗った女が近付いて来ていた。長い道のりを走破して来たのは明白である。書斎に招じ入れられると、息を切らして話始めた。 「裏切られた」と女があえぐように言った。「ブラックゲートが帝都軍によって奪取されたわ」 2920年 南中の月24日 バルモラ (モロウウィンド) ソーサ・シルがアルテウム島に行った後で、モロウウィンドの法廷のメンバー3人が1同に会するのは、実に17年振りであった。しかし、このような形での再会は、3人の誰も願ってはいなかった。 「我々の情報によれば、王子の指揮する帝都軍が南方のシロディールへと立ち去るのと入れ代わりに、別の帝都軍が北方から迫って来たようだ」と、石のように固まった表情の仲間に向かって、ヴィヴェックが言った。「もちろん、王子がこの攻撃を知らなかったという可能性もある」 「だが、その逆も考えられる」とソーサ・シルが答えた。「王子が気を引いている間に、皇帝がブラックゲートを討つ。いずれにせよ、これは講和協定の破棄と見るべきだな」 「モーンホールド公爵はどこに?」とヴィヴェックが尋ねた。「彼の意見も聞きたい」 「テル・アルーンの夜母と会っているところよ」とアルマレクシアが静かに答えた。「あなたと話すまで待つよう言ったんだけど、でも、『この問題については、もう待てない』と」 「モラグ・トングを巻き込むつもりなのか? 国の問題だぞ?」と言ってヴェヴェックは首を振ると、ソーサ・シルに言った。「全力を尽くして欲しい。暗殺は事態を逆戻りさせるだけだ。この問題には、外交もしくは戦闘しかない」 2920年 南中の月25日 テル・アルーン (モロウウィンド) 大広間の夜母とソーサ・シルを、月の光だけが照らしている。彼女はこの上なく美しいドレスの上に簡素な絹の黒ローブを羽織って、長椅子にもたれかかっていた。夜母は赤マントの衛兵達を退室させると、彼にワインを勧めた。 「ちょうど公爵と入れ違いね」と彼女は囁いた。「彼、悲しんでいたわ。でも、私達がしっかり解決してみせます」 「公爵は、皇帝を殺すモラグ・トングの暗殺者を雇ったんだろう?」とソーサ・シルが尋ねた。 「はっきり言うわね。いいわ、そういう人、好きよ。時は金なりね。もちろん、私と公爵との話をあなたに教える訳にはいかないけど」と彼女はにっこり笑った。「商売上の守秘義務だから」 「もしも、皇帝の暗殺を止めさせるのに、同じだけの金を出すとしたらどうする?」 「私達モラグ・トングは、メファーラの栄光と利益のために動いているの」と夜母は言ってグラスを傾けた。「これは単なる殺しじゃない。そんなのは冒涜に過ぎない。三日以内に公爵から金が入れば、仕事にとりかかって、終わらせる。でもその逆の仕事をするなんてあり得ないこと。確かに、私達は利益を求めて動くけれど、単なる需要と供給に屈するわけにはいかないのよ、ソーサ・シル」 2920年 南中の月27日 内海 (モロウウィンド) ここ2日間ずっと内海を眺めていたソーサ・シルは、ついに目当ての船がやってくるのを見つけた。モーン・ホールドの旗を掲げた重装船である。妖術師ソーサ・シルは先手を取って、船が港へ着くのを妨害した。炎の帯が彼の体から噴き出し、声が変わり、炎はデイドラの形に変化した。 「その船を捨て去れ!」と彼は大声で唸った。「さもなくば、船もろとも沈めてやろう!」 実際に放った火の球は一つだけだったが、彼の思惑通り、乗組員達は暖かい海へと飛び込んで行った。全員が飛び込んだのを見計らって、彼は強烈なエネルギーを破壊的な波動に込めた。その波動は、空気と海水を震わせながら、公爵の船をことごとく粉砕し、船はモラグ・トングの報酬になるはずだった公爵の金と共に、内海の深くへと沈んでいった。 「夜母よ」と、沿岸警備員に救助が必要な船乗りがいることを知らせるために岸に向かって泳いでいる間、ソーサ・シルは考えていた。「需要と供給には誰もが従わねばならないのだ」 時は、収穫の月へと続く。 物語(歴史小説) 紫1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/250.html
この神殿で修行する者は以下を読むこと: 聖蚕会は古代から続く高貴な教団である。我々が育み賛美するのは、聖蚕の形をとって現れる、敬愛する祖先の魂である。それぞれの蚕は祖先の魂のフィロンを持っている。フィロンとは、大雑把に訳せば「平和を求める心」となり、それは歌われることで聖蚕が作る繭の中に込められるのである。その繭から絹糸を紡ぎ、布を織り、正しい祖先へと導く系譜を刺しゅうすれば、素晴らしい力を持った服ができあがる。 教団の道士は予知の能力を持つ。この祖先の知恵は、未来を現在に歌い表すことができるのである。そのため、我々の教団はエルダースクロールの理解という恩恵にあずかることができるが、それは我々の教団のみに許された特権なのである。これらの預言書はデイドラ、エイドラ両方の神々をも超越している。この現実を織りなす繊維の隙間を覗き込むことは代償を伴う。エルダースクロールは、読み進めるにつれて難解さを増すという性質を持っている。読んだ代償として視力を失う期間もまた、読むほどに長くなるのである。そして、最後まで読み進めば予言の内容の真髄までをほぼ知ることができるが、その者は永遠に視力を失いこの世の光に別れを告げねばならない。そうなっては予言を読むこともかなわない。 修道院は、我々の教団のそういった高位の者たちが住み、他の者たちが彼らに仕える場所である。彼らは世俗を離れ、敬愛する聖蚕たちと共に生きている。彼らのいる地下は聖蚕にとって住みやすい場所なのである。彼らはか弱い蚕たちを育み、歌いかける。また、絹糸をとり、紡ぎ、布を織り、繭を作った祖先の系譜と歴史を刺しゅうする。これが、彼らの新しい生活である。 彼らが聖蚕の世話をしているあいだ、我々が彼ら盲目の修道士たちの世話をする。彼らが闇の中で働くあいだ、我々は光のもとで働くのである。彼らの求める食べ物と水を提供する。彼らの求める道具や家具を提供する。彼らの求める秘密と匿名性を提供する。そして、彼らの労働の成果を売りにゆく者を提供する。 また、同時に護衛も提供している。何世代も前に、ガドランが我々の神殿を訪れた。予言を読んで盲目になったばかりの彼女は、我々に教えをもたらした。祖先は修道士たちが自らを守る必要性を予見したのである。修道士たちは今でもガドランの教えどおり鍛錬を怠らない。彼らは剣ではない剣、斧ではない斧の達人である。 修行者として、あなたはガドランの教えを学ぶであろう。拳を平和的に使う方法も学ぶことになる。盲目の修道士たちに仕えることも学ぶ。提供することを学ぶ。そしてやがて、聖蚕の平和と英知を身に付けるであろう。 白1 盗賊ギルド関連 神話・宗教
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/232.html
ドラゴンの突破 ファル・ドルーン 著 第三紀後半はとりわけ宗教的騒乱と創造の巻き起こる時代であった。ユリエル七世の治世におこった激変は、のちにセプティム王朝の没落を招くことになる歴史的な力の表面的な兆しに過ぎなかった。いわゆる「ドラゴンの突破」は、帝都内の多岐にわたる異教団体や反社会的集団によって、この時初めて提唱されたものである。彼らはただタイバー・セプティムによる権力の勃興、つまりセプティム王朝の「建国神話」を包囲しようという共通の執念によってのみ結びついていた。 「ドラゴンの突破」教義の基礎となったものが、権威ある「タムリエル百科事典」に掲載された年代記のやや散文的な誤植であることは有名である。この百科事典は第三紀12年、タイバー・セプティム治世の初期に出版された。この時代、アリノールの公文書は人間種の学者には公開されず、アレッシア時代のもので現存しているものも、断片的にしか残っていない。アレッシアは見つかる限りの書物はすべてまとめて焼き払い、彼ら自身の記録書は「正道戦争」の間に大部分が損なわれてしまった。 「タムリエル百科事典」の編纂者が、アレッシアの司祭職たちが期日を記録するために用いた「年」という概念に疎かったのは明らかだ。我々ならばこの「年」が高位の巫女たちによる長い幻視期間の長さを言及することだとわかる。それは数週間から数ヶ月にもわたることがある。現存している幻視に関する巻き物をアレッシア神殿の装飾壁画とともに分析してみれば、アレッシア会は百科事典に記載されている1008年もの存続どころか、たった150年ほどしか存続していなかったことが分かる。このように、アレッシアの歴史が1000年も足される謎は受け入れられていたが、第三紀後半にロルカーン教団が拡大し、「ドラゴンの突破」の教義が確固たるものになるまで説明がつかなかった。なぜなら、この年代記述方法(およびこれに関する説明)はこの時広く知れ渡り、今日までに数々の歴史学者たちにも繰り返し用いられ、もはや伝統のようになってさえいたからだ。しかしこの部分に関しては、第三紀の歴史学者たちがアレッシアからすでに2000年以上も隔絶されていたことを考慮する必要がある。歴史は初期段階にあり、その当時のことを伝えるわずかな古文書に頼っていたのである。 現代の考古学や古数神秘は、先に述べた私の研究する「アレッシアの日付の概念」の確証を握っている。ドラゴンの突破は第三紀に提唱されたもので、学者の誤植に基づき、終末論とヌミディウム主義の執着を煽り、学者の惰性によって保存されたのである。 歴史・伝記 白1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/173.html
2920 星霜の月(12巻) 第一紀 最後の年 カルロヴァック・タウンウェイ 著 2920 星霜の月1日 バルモラ (モロウウィンド) 窓に凍りついたクモの巣の隙間から冬の朝の光が差し込み、アルマレクシアは目を覚ました。老齢の治癒師は安堵の笑みを浮かべて、濡れた布で彼女の頭を拭いた。彼女のベッドの脇の椅子ではヴィヴェックが眠りこけていた。治癒師はキャビネットから急いで水差しを取ってきた。 「ご気分はいかがですかな?」と治癒師は尋ねた。 「とても長い間眠っていたようです」とアルマレクシアは答えた。 「仰るとおり、実に15日間も眠られていましたよ」と治癒師は言い、そばにいるヴィヴェックの腕を揺り動かした。「起きてください。アルマレクシア様が目覚められましたよ」 ヴィヴェックは跳ね起き、アルマレクシアが目覚めたのを確認するやいなや顔が嬉しさでほころんだ。ヴィヴェックは彼女の額にキスをし、手を取った。少なくとも、彼女の体は温かさを取り戻していた。 しかし、アルマレクシアの穏やかな休息は終わった。「ソーサ・シルは……」 「彼も無事だ」とヴィヴェックは答えた。「またどこかで機械をいじってるさ。先ほどまでここで一緒に心配していたが、彼はあの一風変わった魔術で君にしてやれることがあると気付いたんだ」 そこへ城主が戸口に現れ、「お邪魔をしてしまい申し訳ございません。早急にお耳に入れたいことがございます。昨夜、帝都に向けてお送りした伝令の件で」と言った。 「伝令?」とアルマレクシアは尋ねた。「ヴィヴェック、何が起きたのです?」 「6日に皇帝と停戦協定を結ぶ約束だったのだが、延期を申し込んだのだ」 「あなたはここにいてはいけません」とアルマレクシアは言い、自力でなんとか起き上がろうとした。「あなたが今協定を結ばなければモロウウィンドは再び戦火の渦に巻き込まれ、平和を取り戻すのにさらにもう80年かかるかもしれません。お供を連れて今すぐここを発てば1、2日遅れるだけで済みます」 「本当にあなたはもう大丈夫なのか?」とヴィヴェックは尋ねた。 「今あなたを必要としてるのは、私ではなくモロウウィンドです」 2920 星霜の月6日 帝都 (シロディール) 皇帝レマン三世は玉座に腰掛け、謁見室を見渡していた。それは豪華な眺めであった。垂木からぶら下がる銀の飾り紐、四隅には香草の焚かれる大釜が置かれ、ピアンドニアのチョウが歌うように宙を舞っていた。松明に火が点され、使用人たちが一斉に火に向かって扇をはたき始めると、この部屋がきらめく夢の世界へと変わるようであった。そうこうしているうちに厨房の方からおいしそうな香りが漂って来た。 支配者ヴェルシデュ・シャイエとその息子、サヴィリエン・チョラックは謁見室へそっと滑り込んできた。2人ともツァエシの頭飾りや宝石で着飾っていた。その黄金に輝く顔に笑みはなかった。もっとも、それはいつものことだったが。皇帝はこの信頼できる相談相手に嬉しそうに挨拶の言葉をかけた。 「野蛮なダークエルフたちもこれには驚くであろう」と皇帝は笑っていった。「お客はいつ到着するのだ?」 「ヴィヴェックからの伝令が先ほど到着いたしました」とシャイエは厳かに答えた。「陛下お一人でお会いするのがよいかと」 皇帝の顔から笑みが消え、使用人たちに下がるよう命じた。扉が開き、コルダが羊皮紙を片手に部屋に入ってきた。彼女は後ろ手で扉を閉め、皇帝と目を合わせようとしなかった。 「伝令は手紙をそなたに渡したのか?」とレマンは疑わしい口調で言い、椅子から立ち上がり手紙に手を伸ばした。「この受け渡し方は極めて非礼であろう」 「ですが、手紙の内容は実に礼儀正しいものでしたよ」とコルダは皇帝の神の目を見つめて答えた。瞬きする暇もなく、彼女は手紙を皇帝の顎へと突きつけた。突きつけられた手紙に視線を落とし皇帝は怒りに顔を歪ませた。そこにはただ小さな黒い刻印が書かれてあった。それはモラグ・トングの刻印だったのだ。次の瞬間、手紙は床に落ち、その陰に隠されたダガーが姿を現した。コルダは腕をひねって、皇帝の喉仏を骨まで切り裂いた。皇帝は音もなく静かに倒れこんだ。 「どれぐらいの時間が必要だ?」とサヴィリエン・チョラックが尋ねた。 「5分ね」とコルダは手に付いた血をぬぐいながら答えた。「10分くれればその分ありがたいわ」 「わかった」謁見室から走り去ろうとするコルダの背に向かってヴェルシデュ・シャイエがそう答えた。「彼女みたいな人物がアカヴィルであればよかった。女性で剣の腕がたつとは実に稀有な存在だ」 「私はアリバイ作りに行ってきます」とサヴィリエン・チョラックは言い残し、皇帝の側近でしか知り得ない秘密の通路へと消えていった。 「1年前の事を覚えていらっしゃいますか、陛下」と、ヴェルシデュ・シャイエは笑顔で瀕死の皇帝を見下ろしながら問いかけた。「私に向かって『そなたらアカヴィルの動きは派手派手しい。しかし、我々の攻撃が一度でも当たれば、そなたもおしまいだ』とおっしゃいましたが、陛下こそ、このお言葉を覚えておくべきでしたね」 皇帝は血の塊を吐くのと同時にこうもらした。「この蛇め」 「いかにも私は表も裏も蛇でございます、陛下。しかし、嘘はついておりません。ヴィヴェックからの伝令は届いております。どうやら到着が遅れるそうです」と言ってヴェルシデュ・シャイエは肩をすくめながら秘密の通路へと消えていった。「ご心配なさらず。食事の管理は私にお任せを」 タムリエルの皇帝はこの豪華に飾られた謁見の間で自らの血溜まりに溺れていった。衛兵が彼を見つけたのはその15分後のことであった。その頃コルダは姿形もなく消え去っていた。 2920 星霜の月8日 カエル・スヴィオ (シロディール) ヴィヴェックとその連れが到着した際、一番最初に挨拶をした密使はグラヴィアス卿で、彼は森を通ってくる道のひどさをやたらと詫びた。邸宅を囲む葉の落ちた木々には燃える球の飾りが幾重にもつけられており、冷たい夜風に優しく揺れていた。邸宅の方からささやかな祝宴の料理のにおいが漂い、高音の悲しい調べが聞こえてきた。それはアカヴィルの伝統的な冬の祝歌であった。 ヴェルシデュ・シャイエは正面扉のところでヴィヴェックに挨拶した。 「あなたが帝都へ来られる前に伝令を受け取れたのは良かった」と言ってヴェルシデュ・シャイエはヴィヴェックを広く暖かい客間へと案内した。「我々は今厳しい時代、いわば過渡期におります。当面は、議事堂での職務は控えることにしました」 「王位後継者の方はいらっしゃらないのですか?」とヴィヴェックは尋ねた。 「公式にはいらっしゃいません。玉座を狙う遠戚の方は大勢おられますが。ともかく、当分の公式行事は、私が先の主の代わりに務めることを貴族の方々にはご了解いただいております」そう言って支配者ヴェルシデュ・シャイエは使用人に2脚のゆったりとした椅子を暖炉の前に運ぶよう指示した。「今すぐこちらで協定を結んだほうがよろしいですか? もしくは先にお食事でも?」 「あなたは先帝の協定をそのままお引継ぎになられるのですか?」 「私はすべてを皇帝と同じように執り行うつもりでおります」とヴェルシデュ・シャイエは答えた。 2920 星霜の月14日 テル・アルーン (モロウウィンド) 道中で土ぼこりにまみれたコルダは夜母の腕に飛び込んだ。しばらくの間2人はしかと抱き合い、夜母は娘の髪を優しくなでつけ、額にキスした。そして袖から一通の手紙を取り出し、コルダに渡した。 「これは?」とコルダは聞いた。 「支配者ヴェルシデュ・シャイエからのお礼の手紙よ」と夜母は答えた。「彼は今回の暗殺の支払いをすると言ってきたのだけれど、もう返事は送ったの。皇后様から皇帝暗殺の報酬は十分にいただいたもの。必要以上の強欲はメファーラが許しませんからね。同じ暗殺の報酬を2度受け取る必要はない、と返したわ」 「皇帝はリッジャを殺したわ」とコルダは静かに言った。 「だからこの暗殺はあなたがやるべきだったのよ」 「これからあたしはどこへ行ったらいいの?」 「有名になりすぎて聖戦を続けられなくなった聖者は、ヴヌーラと呼ばれる島へ行くことになっています。ボートで1ヶ月かそこらの旅ですよ。その聖域であなたが優雅な日々を暮らせるよう手はずは整えておきました」夜母は娘のこぼれる涙にキスをし、「そこでたくさんのお友達ができますよ。永遠に平和で暮らせますよ」と言った。 2920 星霜の月19日 モーンホールド (モロウウィンド) アルマレクシアは再建されていく街並を見て回っていた。黒こげに焼け落ちた古き建物の上に新たな骨組みを組む中を歩きながら、彼女は「ここの市民の志には実に心を打たれる」と思った。かつて街道沿いに並木を作ったコムベリーとルーブラッシュの低木は、しなびてはいたがかろうじて生命をつないでいた。アルマレクシアは鼓動を感じた。春が訪れる頃には緑が黒を追いやっているだろう。 デュークの後継者である、高い知能と不屈のダンマーの勇気を兼ね備えた1人の青年が、北方より父親の領地へと向かっていた。この地は存続するだけではなく、力を備え、広がりを見せるであろう。アルマレクシアは今見ているものより、未来を思って心強く感じた。 彼女が唯一確信したことは、この地モーンホールドが少なくとも一人の女神の永遠の故郷であると思っているということだ。 2920 星霜の月22日 帝都 (シロディール) 「シロディールの血筋は途絶えた」とヴェルシデュ・シャイエは帝都宮殿の伝えし者のバルコニー下に集まった大衆に向け発表した。「しかし、帝都はこれからも生き続ける。信頼のおける諸貴族たちは、次期王位にはこれまで長く受け継がれてきた皇族の遠戚たちの中に相応しいものがいないと判断した。よって、先帝レマン三世から最も信頼されたこの私が、先帝の意思と職務を引き継ぐことなる」 このアカヴィルはそこで一呼吸置き、自分の発した言葉が大衆に理解されるのを待った。だが、大衆はただ彼を無言のまま見上げるだけだった。雨が街の道という道を洗い流したが、ほんのわずかな間、冬の嵐を小休止させるように太陽が顔を出した。 ヴェルシデュ・シャイエは続けて「私が帝位を受け継ごうとしているのではないことをわかっていただきたい。私はこれからも支配者ヴェルシデュ・シャイエとしてここに立つが、あなた方にとっては1人の外国人にすぎない。だがしかし、新たな後継者が出現するまで、私はこの第二の祖国を守り通すことをここに誓う。そこで早速、最初の仕事として、この歴史的に記念すべき日を称え、本日を暁星の月、第一日目と定め、第二紀の始まりであることをここに宣言する。まず先帝の喪失を悼み、そして未来に期待しよう」と言った。 この言葉に拍手を送ったのはたった1人だけだった。その1人とはセンチャルのドローゼル王であり、彼は今日このタムリエルの地に華々しいスタートが切られたことを信じきっていた。もちろん、この時彼は完全におかしくなっていた。 2920 星霜の月31日 エボンハート (モロウウィンド) ソーサ・シルが、彼の不思議な機械で未来を作り出した都市の下に横たわる煙たい地下墓地で、思いがけないことが起こった。今まで壊れることのなかった歯車の間から油性の泡が吹きこぼれていた。ソーサ・シルはすぐそれに気付き、泡を発生させているチェーンを調べた。パイプが左に半インチずれてしまい、かみ合わせが1ヶ所外れてしまっていた。コイルも巻き戻り、反対方向へと回り始めていた。1000年もの間ただの一度も壊れることなく左から右へと動いていたピストンが、突然右から左へと逆方向へ動き出した。どこも壊れてはいないが、すべてが変わってしまった。 「すぐには直りそうにないな」と妖術師は静かに言った。 天井の隙間から夜空を見上げた。真夜中であった。こうして第二紀は混乱のスタートを切ったのであった。 物語(歴史小説) 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/106.html
ペリナルの歌 第8巻:啓示とアレ=エシュの死 [編者注:この断章は現存するペリナルに関しての文書で最も古く、最も断片的なものである。しかしながら、その発生時期に実際に歌われ伝えられていたペリナルの歌に最も近いと思われ、短さに反してその価値は高い。奇妙なことに、アレッシアの死に際にペリナルがいたと読める箇所があり、それ以前(アレッシアの死より何年も前)にウマリルに殺されていたという他の文書の記述と矛盾する。一部の研究者は、この断章がペリナルの歌の一部ではないとしているが、多くの研究者はこの断章が本物であると信じており、議論が存在する。] 「…… そして、私の半身とともに力を集めさせたのだ、その半身はその死すべきものの観念に光を与えた。それは[神々の]喜び、それは自由、天にもその本当の意味は知られていない[だからこそ]父なる…… [文章欠落]…… 協定より以前、最初の[日々?精霊?渦巻き?]……の中でこの世の憤怒を模して。[我々は]今あなたをつれてゆく。我々の本当の顔を[見せて]やろう…… [それらは]時がくるたびに失われた記憶の中で互いに食らい合う」 歴史・伝記 赤1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/108.html
ペリナルの歌 第1巻:その名について [編者注:1巻から6巻に収められた文章は、帝都図書館所蔵のいわゆるレマン文書から採られたものである。この文書は、第二紀初期に無名の研究者によって集められたもので、古代文書の断章の写しからなる。古代文書のそもそもの出所は不明であり、いくつかの断章は同時期に書かれた(同じ文書からの断章という可能性もある)ものと考えられている。しかし、6つの断章の成立時期に関する学術的な合意は得られておらず、ここでもその断定は避ける。] 彼の名前「ペリナル」はまことに驚くべきであり、奇妙である。多くの異名は後についたものにすぎない。それはエルフの名であるが、ペリナルはエルフに災いをもたらすものであり、その名はエルフにとって皮肉というよりも残酷であった。若い時分から、ペリナルは白髪をたなびかせ暴れまわった。敵であるエルフたちが彼らの言葉で彼をペリナルと呼んだのだろうか、しかし、その名がエルフの言葉で「栄光の騎士」を表していて、もちろん彼がそのような存在ではなかったことを考えると、そうとは考えにくい。彼がタムリエルにいた頃、他のものたちは多くの異名をペリナルの名に加えて呼んだ。彼は、光り輝く左手で敵を討つペリナル・ホワイトストレークであり、血(を飲ん)で勝利を祝うペリナル・ブラッディであり、聖戦士たちを立ち上がらせたペリナル・インサージェントであり、兵士がその旗印を見て八大神に感謝を捧げる、勝利の化身ペリナル・トライアンフであり、彼の剣一本に頼る戦略について来られない味方を叱責するペリナル・ブレイマーであった。また彼はペリナル・サードとも呼ばれたが、これについては彼が三度よみがえった神の化身であるからとも、彼が反乱に加わる以前、聖アレッシアとも呼ばれるペリフが自由への祈りの中で見た3番目の幻影が彼の姿だったためともいわれている。 歴史・伝記 赤1 ペリナルの歌 第2巻:その訪れ [編者注:1巻から6巻に収められた文章は、帝都図書館所蔵のいわゆるレマン文書から採られたものである。この文書は、第二紀初期に無名の研究者によって集められたもので、古代文書の断章の写しからなる。古代文書のそもそもの出所は不明であり、いくつかの断章は同時期に書かれた(同じ文書からの断章という可能性もある)ものと考えられている。しかし、6つの断章の成立時期に関する学術的な合意は得られておらず、ここでもその断定は避ける。] (そして)ペリフは天を仰ぎ、神々の使いに語りかけた。天はエルフが地上を支配し始めたから、その慈悲を失っているように見えた。ペリフは、命に限りある人間であった。彼女の同胞である人間の、弱さの中の強さや謙虚は神々の深く愛するところであり、人間が、最後にある死を知りながら命を燃やす姿は神々の憐れみを誘っていた(向こう見ずに魂を燃やす者たちが竜の一族に好かれるのと同じ理由である)。そして、彼女は神々の使いに語りかけた:「そして、私はこの思いに名前をつけ、それを自由と呼びました。失われし者シェザールの、別の名前だと思います…… (あなたは)彼が失われたとき、最初の雨を降らせました。(そして)私は今、彼に起こったのと同じことが邪な支配者たちに起こるよう願います。彼らを打ち破り、彼らのした残虐な仕打ちの代償を支払わせ、トーパルの地へ追いやり(たいのです)。あなたの息子、あの強く、荒ぶる、猛牛の角と翼を持つあのモーリアウスをもう一度地上につかわし、私たちの怒りを晴らさせてください」…… (そしてその時)カイネはペリフに新しい印を与えた。それはエルフの血で赤く染まったダイヤモンドで、その面は(なくなり、形を変え)一人の男となってペリフの縛めを取り払った。その男は「星の騎士」(を意味する)ペリナルと名乗り、(そして彼は)(未来の)武具を身に付けていた。そして彼はシロドの密林へと分け入り、そこにいるものを殺した。モーリアウスはペリナルの出現に喜び、地上に降りてペリナルに寄り添った。(それからペリナルは)ペリフの率いる反乱軍の陣地に戻り、自分の剣とメイスに刺さったエルフのはらわた、首、羽、アイレイドーンの印である魔玉などを見せた。血で固まったそれらを掲げたペリナルは言った「エルフの東の長だったものだが、こうなっては名乗ることもできまい」と。 歴史・伝記 赤1 ペリナルの歌 第3巻:その敵 [編者注:1巻から6巻に収められた文章は、帝都図書館所蔵のいわゆるレマン文書から採られたものである。この文書は、第二紀初期に無名の研究者によって集められたもので、古代文書の断章の写しからなる。古代文書のそもそもの出所は不明であり、いくつかの断章は同時期に書かれた(同じ文書からの断章という可能性もある)ものと考えられている。しかし、6つの断章の成立時期に関する学術的な合意は得られておらず、ここでもその断定は避ける。] ペリナル・ホワイトストレークは当時のシロドに住む全てのエルフの敵であった。しかし、彼はアイレイドの妖術師の王たちを、戦争ではなく、主に彼自身が決闘をして倒していた。反乱はパラヴォニアの軍隊と彼が甥と呼んだ雄牛モーリアウスに任せていた。ペリナルは銅と茶のハロミアをトールでの決闘に呼び出し、彼の頚動脈を噛み切ってレマンを称える雄たけびを上げた。レマンという名は、当時誰にも知られていなかった。シェイパーのゴルドハウアーの首は山羊の顔を模したニネンダーヴァの祭壇に落とされ、ウェルキンドの魔力によって悪が蘇らないよう、ペリナルは賢明にも呪文によって彼らを封印した。その同じ季節のうちに、ペリナルはセヤ・タールの御影石の階段でハドフールを倒した。火の玉の槍兵が初めて破られた戦いであった。その当時、アイレイドの武器でペリナルの防具を貫けるものは何一つ無かった。ペリナルはその防具が人間の作ったものでないことは認めても、それ以上のことはどんなに請われても語らなかった。ペリナルが初めて憤怒に我を忘れたのは、彼が農奴から重装歩兵にまで育てあげ、非常にかわいがっていたフーナが、シンガーのセレスレルのくちばしから作られた矢じりで殺されたときであった。彼はナルレミーからセレディールまで全てのものを破壊しながら進み、これらの土地をエルフと人間の地図の上から消してしまった。ペリフは神々にいけにえを捧げ、この行いに怒って地上を去らないよう祈らなければならなかった。そして、その後、白金の強襲が起こった。アイレイドたちがメリディアのオーロランたちと協定を結んで彼らを呼び出し、金色の半エルフ、羽を失いしウマリルを彼らの味方の闘士にしたのである。そして、地上に現れて初めて、ペリナルは決闘に呼び出される側になった。アダの血をひくウマリルは不死身であり、恐れを知らなかった。 歴史・伝記 赤1 ペリナルの歌 第4巻:その功績 [編者注:1巻から6巻に収められた文章は、帝都図書館所蔵のいわゆるレマン文書から採られたものである。この文書は、第二紀初期に無名の研究者によって集められたもので、古代文書の断章の写しからなる。古代文書のそもそもの出所は不明であり、いくつかの断章は同時期に書かれた(同じ文書からの断章という可能性もある)ものと考えられている。しかし、6つの断章の成立時期に関する学術的な合意は得られておらず、ここでもその断定は避ける。] (ペリナルは)妖術師の軍隊をニベンより追い払い、東の土地全てをパラヴァニアの反乱軍のものにした。カイネは人間たちがそこで進軍のための陣をはれるよう、雨を降らせて村やアイレイドの旗が降ろされた砦から血を洗い流さなければならなかった。(それから)ペリナルはヴァータシェの扉を壊し囚人たちを解き放った。このとき、モーリアウスに乗った奴隷の女王が頭上を飛び、人間たちは彼女を初めてアレ=シュと呼んだ。彼はまた…… の門を抜け、その夜アイレイドに盗まれたセドール(今では誰も知らないが、当時は名高い部族であった)の千の精鋭の手を取り戻した。二千の手を魔族の骨で作られた荷車に載せると、荷車は女の悲痛な叫びのような音をたててきしんだ。 ……(文章欠落)…… クリーズ族の北方における勢力を強化した最初の大虐殺(の後)、彼は白い髪をエルフの血で茶色く染めてヘルドン橋に立ち、ペリフの鷹匠に導かれてきたノルドたちはその姿を見てショールの再来と恐れおののいたが、ペリナルはその名前を冒涜するかわりに彼らの足元に唾を吐きかけた。それでもとにかくペリナルは彼らを率いて西の大陸へ進み、アイレイド達を白金の塔の方角へと追い詰めていった。アイレイド達は突然自由になった人間たちの勢いと、この激しさがどこからもたらされたものなのかを理解できぬまま後退を余儀なくされていた。ペリナルは、ウマリルが反逆者の進軍を止めようと放つサンダーナックをメイスで砕き、「カイネの息吹」モーリアウスがくちばしの矢の一斉射撃で傷ついたときは、彼を賢しきツアサス(ケプチュの名を持つガネード)のもとまで運び治療させた。スキフ評議会において、パラヴァニアの兵士やノルドたちが白金の強襲に怯え、アレ=シュすらも決闘の延期を勧める中、ペリナルは激高し、考えなしに突き動かされてウマリルを罵り、まわりの臆病者たちを罵り、自力で白金の塔へ赴いた。 ダンジョン 歴史・伝記 赤1 ペリナルの歌 第5巻:モールリアスへの愛情 [編者注:1巻から6巻に収められた文章は、帝都図書館所蔵のいわゆるレマン文書から採られたものである。この文書は、第二紀初期に無名の研究者によって集められたもので、古代文書の断章の写しからなる。古代文書のそもそもの出所は不明であり、いくつかの断章は同時期に書かれた(同じ文書からの断章という可能性もある)ものと考えられている。しかし、6つの断章の成立時期に関する学術的な合意は得られておらず、ここでもその断定は避ける。] モールリアスがカイネの息子であることは厳然たる事実である。しかし、ペリナルがシェザリンであるかどうかについては語らないほうがいいだろう(あるとき、ダガー使いのプロンチヌがそれを言って、その夜蛾を喉につまらせて死んだ)。しかし、モールリアスとペリナルが互いを家族と呼び合ったことはよく知られている。モールリアスが弟分であり、ペリナルは彼を甥と呼んでかわいがった。しかし、これらは単に神々に近い不死身の彼らの気まぐれな遊びだったのかもしれない。ペリナルは、戦いに関してはモールリアスに助言などしなかった。この半牛人は素晴らしい戦いぶりを見せていたし、兵をうまく導き、憤怒に身を任せることもなかったからだ。しかしペリナルは、モールリアスがペリフに対して募らせていた愛にだけは警告を与えた。「モール、俺たちはアダだ。愛によって何かを変えなくてはならない。さらなる怪物をこの地上に生み落とさないように気をつけろ。お前が思いとどまらなければ、彼女はお前を愛するようになり、お前のせいでシロドはその姿を変えてしまうぞ」これを聞いたモールリアスは彼の雄牛のような姿を恥じ、彼がパラヴァニアにとって醜すぎるのではないかといつも思い悩んでいた。ペリフが彼の服を脱ぐのを手伝ってくれるときなどは特にそうだった。ある夜、彼は小月神の月の光に鼻輪を光らせ、鼻を鳴らして言った。「彼女はまるでこの鼻輪の光のようだ。ときどき気まぐれに光り輝くが、夜にこうして頭を動かせばいつでもそこに見ることができる。そして、俺は決して手に入れられないものを知るのだ」 歴史・伝記 赤1 ペリナルの歌 第6巻:その憤怒 [編者注:1巻から6巻に収められた文章は、帝都図書館所蔵のいわゆるレマン文書から採られたものである。この文書は、第二紀初期に無名の研究者によって集められたもので、古代文書の断章の写しからなる。古代文書のそもそもの出所は不明であり、いくつかの断章は同時期に書かれた(同じ文書からの断章という可能性もある)ものと考えられている。しかし、6つの断章の成立時期に関する学術的な合意は得られておらず、ここでもその断定は避ける。] [そして]彼はパドメイのように、シシスによってこの世界に生まれ、この世を変える力を与えられていたと言われる。ニューテードのフィフドのように、あるものは、ペリナルの星の防具に隠された胸はぽっかりと開いてその中に心臓はなく、ダイヤモンドの形をした赤い憤怒が粗暴なドラゴンのように吼えているだけだという。これは、彼が神話の再現者であることの証であるという。彼が歩を進めたところは思い通りに形作られたともいわれる。ペリナル自身はこれらの言説を気にかけず、神の論理を唱える者は全て殺した。しかし、美しきペリフだけは例外であった。ペリナルは彼女について「話すより前に行動する。実行を伴わない言葉は死んだ目撃者のようなものだ」と言った。兵士たちが彼がそう言い放ったのを聞いて呆然としているうちに、彼は笑って剣を抜き、カイネの雨の中へ飛び出して行った。そして彼は捕虜のアイレイドたちを虐殺し、「おお、神よ、これが俺たちの憤怒だ! お前たちを見る俺を見ているお前たちが見えるぞ! 俺たちが作ったウマリルは、俺たちを呼び覚ました!」と叫んだ。[そして、そういった]怒りに任せた気まぐれを行うとき、ペリナルは憤怒に我を忘れるのだった。そうなったとき、彼が通った後の土地は神の力を持つ彼の狂暴によって全て滅ぼされ、憤怒の後の虚無がやってくるまでその状態は続くのだった。アレッシアは神々に祈り助けを求めねばならず、神々は心を一つにして救いの手を差し伸べ、ペリナルに殺しの願望を忘れさせ、地上のもの全てを破壊することをやめさせた。ギー族のガリドはかつて、そうしたペリナルの憤怒を遠くから目の当たりにしたが、その後、ペリナルが落ち着いたころにともに酒を飲む機会を得、憤怒に身を任せているあいだはどんな気分なのかと尋ねた。ペリナルは簡潔に答えて言った、「見るもののいない夢のようなものだ」と。 歴史・伝記 赤1 ペリナルの歌 第7巻:ウマリルとの戦い、そして切断 [編者注:この断章はカヌラス湖のアレッシア会の修道院遺跡から発見されたもので、正義戦争(第一紀2321年)以前に書かれたものであると思われる。さらに、文体を分析するとこの断章はペリナルの歌の初期、6世紀中ごろの形式を伝えていることがわかる。] [そして]ウマリルの軍勢[との数々の戦いの末]オーロランの死体が玉座を取り巻くろうそくのように横たわり、ペリナルはアイレイド最後の妖術師の王たちと、重厚なヴェーリアンスで武装した彼らの魔族たちに取り囲まれていた。ペリナルが彼のメイスで床を突くと、その音に敵はひるんだ。彼は「俺を呼び出したウマリルをつれてこい!」と言った…… [しかし]一方、力強さをたたえた顔つきの、邪悪で不死身の金色のウマリルは、接近戦よりも遠いところからの狙い撃ちが好きだったので、白金の塔の陰に長くとどまっていた。さらに多くの兵士たちがペリナルのもとへ送り込まれては死んでいった。彼らはウマリルが[最初の戦いの時から]ため込んでいた長いヴァーリアンスで強化した斧や矢でペリナルの防具を貫くのがやっとだった。[やがて]このハーフエルフは[メリディアの光に包まれて]姿を現し…… 彼のアイレイドーンの血筋を語り、その父、[前のカルパの]世界河の神について語った。そして、ついに流血し荒い息をつくペリナルを見て喜んだ…… [文章欠落]…… [そして]今やウマリルは地に倒れ、その兜についた天使の顔はへこんで醜く歪んだ。ペリナルはそれを見て笑った。。ウマリルの羽のない翼は[いらだつ]ペリナルの剣によって切り落とされた…… ペリナルはウマリルの祖先を侮辱し、全ての古アールノフィから渡ってきた者たちを罵った。[このことを聞いて]エルフの王たちは怒り、憤怒に我を忘れた…… [そして彼らは]ペリナルに襲いかかり、彼らの[頼りの]武器をふるい…… ペリナルの体を八つ裂きにした。混乱し雄たけびをあげる[ペリナルの声は]スキフ評議会にすら[聞こえた]…… [文章欠落] …は[次の朝]モーリアウスが角で塔全体を揺らしている時に逃げた。あるものは大量虐殺のさなか興奮状態にあり、人間たちは全てのアイレイドを殺そうと待ちかまえていたが、逃げ出した王たちや魔族たちを救おうとするものは全てペリナルに殺された後だった…… 王たちが彼らのやったことを証明するために残しておいたペリナルの頭部はモーリアウスが見つけた。彼らは会話を交わし、ペリナルは後悔を口にした…… しかし、反乱軍の者たちはすでに引き返しており、これを聞く者は誰もいなかった…… そして、不死身の彼らは[その後もさらに]話しこんだが、パラヴァントでさえもそれを聞こうとはしなかっただろう。 歴史・伝記 赤1 ペリナルの歌 第8巻:啓示とアレ=エシュの死 [編者注:この断章は現存するペリナルに関しての文書で最も古く、最も断片的なものである。しかしながら、その発生時期に実際に歌われ伝えられていたペリナルの歌に最も近いと思われ、短さに反してその価値は高い。奇妙なことに、アレッシアの死に際にペリナルがいたと読める箇所があり、それ以前(アレッシアの死より何年も前)にウマリルに殺されていたという他の文書の記述と矛盾する。一部の研究者は、この断章がペリナルの歌の一部ではないとしているが、多くの研究者はこの断章が本物であると信じており、議論が存在する。] 「…… そして、私の半身とともに力を集めさせたのだ、その半身はその死すべきものの観念に光を与えた。それは[神々の]喜び、それは自由、天にもその本当の意味は知られていない[だからこそ]父なる…… [文章欠落]…… 協定より以前、最初の[日々?精霊?渦巻き?]……の中でこの世の憤怒を模して。[我々は]今あなたをつれてゆく。我々の本当の顔を[見せて]やろう…… [それらは]時がくるたびに失われた記憶の中で互いに食らい合う」 歴史・伝記 赤1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/261.html
ネレヴァルの月と星 [これはアシュランドの伝説に関する帝都の様々な学者たちによる一連の研究論文から数篇を集めたもののようである。] 遥か昔、ドワーフたち、および西方からの外来者の大群がダークエルフの土地を奪いに押し寄せた。その頃のネレヴァルは偉大なるカーンであり、家人一同を統率する武将でもあったが、太古の精霊たちと一族の掟に従い、我々の一員となった。 よって、ネレヴァルがその貴重な祖先の指輪、月星の下の一族をもって、精霊たちの法を守り大地の戒律を尊ぶと誓いを立てた時、全ての部族が家人たちのもとに集い、赤き山にて大いなる戦いが繰り広げられた。 多くのダークエルフ、一族の者および家人が赤き山で命を落としたものの、ドワーフたちは倒されてその邪悪な魔術は一掃され、外来者たちはかの地から追いやられた。だがこの偉大なる勝利の後、権力欲に目の眩んだ諸大家のカーンたちが秘密裏にネレヴァルを暗殺し、自らを神として崇めさせ、各部族に対するネレヴァルの約束をないがしろにしたのだった。 しかし、いつの日かネレヴァルがその指輪と共に戻り、偽りの神々を倒し、指輪の力によって精霊たちを尊び外来者をかの地から追いやるという各部族との約束を全うするであろうと言われている。 神話・宗教 紫1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/243.html
評論・ザルクセスの神秘の書 第3巻 マンカー・キャモラン 著 チム 塔は天の覆いのすべてに触れている、兄弟修練者よ、そしてその頂に至るまでに、人はあるべき姿に変われる。さらに、かつての自分自身になり、しかもなお、その道を辿る他のすべての者たちと、後から歩いてくる者たちのために、変化することができる。これがヌマンティアの第3の鍵であり、死を定められた人間がいかにして創造者となり、創造者が人間に戻ったかに関する秘密である。輪の骨は肉体を必要としており、しかもそれは人類にとっての家宝である。 誓いを破る者たちよ、警戒するがいい。裏切り者たちはニミックの道を辿り、冗漫な神の駆ける犬となるのだから。ドラゴンの血は優美な迷宮において6千年間、隠れた即位を続けている。その迷宮は闘技場であり、すなわち誓約の場であることを、彼らはまだ否定している。神の書に従い、この鍵を受け取り、覆いを奪う者を囲う神聖な殻を突き刺せ! 黄金の肌! SCARAB AE AURBEX! 誓いを破る者たちに苦悩を! 黄金の肌については、ザルクセスの神秘の書にいわく「道を誤って進む惨めな者に欺かれてはいけない。その者たちは、他の惑星を知らないエイドラのせいで信仰を失ってしまったのだから」。そのため神デイゴンの言葉は我々に、それら不忠実な者たちを破壊するように指示している。「惨めな者たちの肉を食らい、あるいは血を搾り取り、最初は彼らにも神の道を歩ませようとしたささやかな意志を奪い取るがいい。彼らを遅れさせた脇腹に向けてそれを吐き出し、あるいは焦げつかせるのだ。彼らがムネモリであることを忘れずに」 すべての新たな四肢は、知られざる者たちがその代価を支払っている。見るがいい、兄弟よ、ヒドラにこれ以上与えてはいけない。 読者よ、君は影の聖歌隊の存在をすぐにも感じ取るだろう。君が今いる部屋は、瞳と声を大きくさせる場所だ。君がこれを読むのに用いているロウソクあるいは呪文の光は、先に私が述べた裏切り者にとっての出入り口となるだろう。彼らのことは冷笑すべきであり、恐れることはない。悪態をつき、その本性を叫んでやるがいい。星のマンカーである私は君を私の楽園へと連れていくためにやって来た。そこでは塔の裏切り者たちが、新たな革命とともに微笑む時が来るまで、割れたガラスにしがみついている。 それがムネモリに対する君の防御だ。彼らは物音に青くなり、新たな覆いの発生によって大地が震える時にのみ輝く。彼らにはこう言ってやればいい。「行ってしまえ! GHARTOK AL MNEM! 神は訪れた! NUMI MORA! NUM DALAE MNEM!」 神話の中を君が歩けば、それは君に力を明け渡すだろう。伝説というものは、手始めに求めるものでしかない。言いようのない真実。第4の鍵を探しながらそのことについて思案してみたまえ。 アルカネイチャーに関して理解されている法則は、熱のように衰えていくだろう。「第1塔の命令:彼がこれ以上の危害を加えることのない、突然変異の範囲を描写せよ。彼はムンダスの神であり、似た者が子孫となって、神々しい火花から分裂する。我々は8人の太守の8倍である。唯一の出口は我々の手にあることを、パドメイの故郷に認めさせよう」 チム。それを知る者は国を再建することができる。かつてジャングルにいた赤い王の故郷を目撃せよ。 楽園に立ち入る者はすなわちその者自身の母親へと立ち入ることになる。AE ALMA RUMA! あらゆる意味でオルビスは終わる。 あらゆる終わりに際して、我々は暁をくまなく探す。たじろいで、私を養う路傍の孤児と一つになるがいい。私に従って来るなら、君を心から敬愛しよう。私の最初の娘はダゴナイトの道から逃げ出した。彼女の名はルーマで、私はパンなしで彼女を食べ、新たに作り、学んだ。私はその子を愛し、連れてやって来たクロウタドリが彼女の双子となった。 兄弟よ、星明りは君の覆いだ。見るためにそれを身にまとい、その光を楽園に加えよ。 神話・宗教 紫1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/273.html
虫の兄弟姉妹たちよ! 我々が直面している試練に落胆することはない。我らの時代はすぐにも訪れるのだから。 虫の神は我々の教団を見守っており、最後の審判の日に我々を苦しみの時代から救い出してくれる。その時が来るまで神が与えし務めを密かに果たし、神の求めに従い、空に目を向けて神の印を探し続けるのだ。 死霊術師の月である幽鬼が我々を見守っている。神性へと昇華した彼の形態は、それがあるべき場所である空に収まり、我々が神に仕えられるよう、敵であるアーケイを我々の目から隠してくれている。印を期待して待て。神々しい光が空から降りてくる時、神の祭壇へと駆けつけ、捧げ物をするのだ。そうすれば神はその真の力の一端を見せてお前を祝福してくれるだろう。神に捧げられた極大魂石は黒ずみ、無意識な魂をわなで捕らえる際に使われるだろう。偉大なるガスタでさえその偉業に驚嘆するに違いない。 黒虫の教団に忠実であれ。お前の忠誠はやがて報いられるだろう。いずれ時が来れば神は世界を正しい状態にするために戻ってきて、邪魔だてをする者たちは、かつて刃向かった者たちがそうなったのと同じように、その手にかかり永遠に苦しむことになるだろう。 その日が来るまで、辛抱強く信じ続けるのだ。洞窟の中に、廃墟の要塞に、あるいは秘密の隠れ家に身を潜めて。子分を育て、召使いを召喚し、呪文をかけるのだ。求められた時には教団の招集に応じるがいい。目を凝らし、耳を澄ませ。 神話・宗教 緑3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/43.html
ドゥーマーの歴史と文化 随筆集 第1章 マロバー・サルと大衆文化におけるドゥーマーの平凡化 ハスファット・アンタボリス 著 マロバー・サルの『ドゥーマーの昔話』はカタリア一世統治時代くらいの昔から、学者たちの間で徹底的にその虚偽が暴かれているが、帝都の教養ある中流階級の定番的な書物である。また学校に通うくらいの子供たちには、一般的なドゥーマーのイメージを植えつけるものとなる。この長大な、不思議なほど中身のない書物の何が、知的階級のあざけりや学者たちの厳しい批判をはねのけてしまうほど、大衆にとって魅力的であり続けているのだろうか。 この疑問を検証する前に、この昔話の起源や成立の過程について簡単にまとめておくのがよいだろう。初版はシロディールの第一帝都崩壊とタイバー・セプティム即位の間の空位期間にあたる第二紀670年頃に出版され、当初はグヴィリム大学の保存資料の研究に基づく学術的な研究という形式で出現し、その時代の混沌の中で(当時のドゥーマー学問の悲しき状況を表しているようであるが)額面通りに受け止められた。著者についてはほとんど分かっていないが、マロバー・サルはどうやらゴア・フェリムという、当時の多作な三文恋愛小説家の偽名ではないかと考えられる。彼はさまざまなペンネームを使い分けることで有名だった。ゴア・フェリムのほかの作品の多くは歴史の中で失われてしまったが、残存する数少ない作品は、言語やトーンの面でこの昔話と符合する(ロミス著『ゴア・フェリム『仮説上の欺まん』とマロバー・サル版『ドゥーマーの昔話』の文章比較に関する考察』を参照)。ゴア・フェリムは生涯シロディールに住み、帝都のエリート向けに軽い小説を書いていた。なぜ彼がドゥーマーを題材に扱ったのかは謎である。しかし、明らかなのは、彼の「研究」は実際にはニベネイ渓谷の農民たちの間に語り継がれる昔話を収集したもので、それをドゥーマーのものに作り変えたということである。 その本はシロディールで人気を集め、フェリムは全部で7巻に渡るほど物語を量産した。ドゥーマーの昔話は、タイバー・セプティムを高貴な地位に押し上げた歴史の力がハートランドの文学を大陸中に広め始めたころには、シロディールの名物として確固たる地位を築き、17版も増刷を重ねた。マロバー・サル版はまだやまぬ愛国主義が急激な高まりみせるなか、人気を博した。 ドゥーマーは物語の中で、動物の姿や、軽く幻想めいたものとして描かれている。しかし、一般的には「人間と同じ」であった。奇抜な感じに描かれていても、彼らに恐ろしげで危険な要素は見当たらない。初期のレッドガード伝説に描かれたドゥーマーが、神秘的で力強い種族で彼らの意思のためには法をも捻じ曲げるような存在であったのと比較すると、そのようなイメージは消えている。ただしまったく失われたというわけではない。また、ドゥーマーは古代のノルドの冒険物語では、冒涜的な宗教行為によって汚れた恐ろしい戦士で、俗悪な手段によってモロウウィンドからノルドを締め出そうとする存在であった。マロバー・サルの描くドゥーマーは、当時の、人類が最高峰の創造物に当たるとし、ほかの種族を啓蒙されていない野蛮人、もしくは未完成な下等人類と見なす考え方にのっとっていて、後の巻になるほど人類は保護の対象となった。昔話は後世にしっかりと根付き、一般的なイメージというものは存続するのである。マロバー・サルのドゥーマーは、我々がようやく理解し始めた神秘性を備えた本当のドゥーマーよりも、非常に穏やかで親切で親しみやすい存在であった。大衆はこの絶滅した種族の、明るく、ありふれた物語の方が好きである。私のドゥーマーに関する長年の研究からしても、この話の方が好まれるのは良く分かる。この後の随筆集でも明らかになるが、現代の我々から見ても、ドゥーマーはあらゆる点において、個性的で特出した種族であった。 民族・風習・言語 赤3